【ブログ引越ししました。従来のブログは→ http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005 です】
先日、福島大学で行われた「原発と人権」全国研究・交流集会第6分科会「原発報道を考える」に参加した。会場には、地元福島の市民も多数参加しており、原発報道が地元の問題を十分に伝えていないことが指摘された。驚くべきことに、年間100mSv以下の被曝は健康に問題がないとする山下俊一福島県医科大学副学長の従来の説明が訂正されることなく、福島では生きているのだという。原子力安全委員会が、年間100mSv以下の被曝でも「がんリスクが見込まれる」ことを認めているにもかかわらず(※1)…。
※1 原子力安全委員会事務局作成「低線量放射線の健康影響について」(http://www.nsc.go.jp/info/20110526.html)
なぜなら、山下氏が福島県医科大学の副学長の地位にあり、県民の被曝被害調査の責任者であるため、県民は山下氏の説明を正しいものと受け止めざるを得ないからだ。
山下氏が県民調査の担当者としてふさわしいか、福島県医科大学の副学長の地位にあるべきかの判断は私にはできない。
しかし、「年間100mSv以下の被曝は健康に問題がない」という説明は、国際放射線防護委員会(ICRP)の見解とは違っており、現在の国際的に標準的な知見では、「100mSv以下の被ばく線量では、がんリスクが見込まれる」(※1)ことは間違いないと判断できる。
というわけで、私は自分にできる方法として、山下氏自身に、書面で質問し、「100mSv以下の被ばく線量では、がんリスクが見込まれる」ことを確認してもらうことが、福島県民の誤解を解く最も簡便で確実なものであると思いいたった。これまでにも、もしかしたら、多くの方が公開質問状を送っているのかもしれないが、福島の実態を聞いた以上、何もしないわけにはいかない。4月13日に下記案文を確定して郵送したいと思う。アドバイスがあれば、ぜひ、コメント欄に残してください。
公開質問状
2012年4月13日
〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地
福島県立医科大学副学長山下俊一 殿
弁護士・NPJ編集長 日隅一雄
冠省 当職は、News for the People in Japanというインターネットサイトの編集長を務めている弁護士です。先日、福島県において、年間100mSv以下の被曝については健康被害が生じないという貴殿の福島第一原発事故直後の説明をいまだに正確だと信じている人が多数いることを知り、そのような誤解を解くためには、貴殿が当初の説明が正確ではないことを表明するしかないと考え、本質問状をお送りすることとしました。
貴殿の当初の見解がどの文献や調査結果に依拠するものか、必ずしも明らかではありませんが、国際放射線防護委員会(ICRP)のパブリケーション99は、低線量被ばくの健康への影響をまとめたもので、2004年10月に同委員会によって承認されたものであり、貴殿もパブリケーション99を否定されることはないと思われます(もし、貴殿がパブリケーション99の見解を否定される場合、その理由と依拠する文献や調査結果を明らかにしてください)。
そのパブリケーション99では、疫学的(これまでの症例に基づく統計的)なアプローチ、放射線がどのようにDNAに影響を与えるかという細胞学的アプローチ、動物実験に基づくアプローチがなされています。
このうち、細胞学的アプローチについては、「現在のところの線量と、時間-線量の関係についてのメカニズムと定量データの理解は、低線量においては直線的な線量反応関係を支持する」(日本アイソトープ協会翻訳版:総括(e))という結論です。つまり、年間100mSv以下でも比例的に健康被害が生じることを裏付けているという結論です。
動物実験に基づくアプローチの結論は、「早期のイニシエーション事象は、細胞遺伝学的損傷の誘発に相当するように思われる。この考えでいくと、低線量域ではメカニズムの議論から直線的な反応が支持される」(日本アイソトープ協会翻訳版:総括(f))というものです。つまり、年間100mSv以下でも比例的に健康被害が生じることを裏付けているという結論です。
残る疫学的なアプローチは、低線量の場合、さまざまな要因によって数値が影響するために、結論を出しにくい状況にあることは間違いありません。しかし、科学的には、10mSv単位でも健康被害が出ているというデータを無視することはできません。
そのデータの一つは、X線骨盤計測によって体内被ばくした胎児に関するものです。日本アイソトープ協会翻訳版の(48)では、「15歳までに白血病及び固形がんで死亡する相対リスクは約1.4となることが知られている」としたうえ、(49)で、このデータのレビュー論文の結論を紹介しています。その結論は、「事実を総合的に考えると、胎児被ばくは小児がんリスクを増加させ、リスク増加は10mGy(mGyは、mSvと読み替えられる)オーダーの線量で起こり、このような状況下での過剰リスクは1Gyあたり約6%である」というもので、10mSvでリスクが増加する可能性があることを認めています。
もう一つのデータは、胸部X線撮影を繰り返し受けた女性に関するものです。日本アイソトープ協会翻訳版の(52)では、「前項ほど直接的ではないが、若い女性で1回平均10mGyオーダーの胸部X線撮影を繰り返して受けた結果、高い累積線量になったために生じた乳がんリスク増加の例がある」としています。
結局、現在の知見からは、理論面(細胞学的アプローチ)及び動物実験からは、100mSv以下でも健康被害が出ることが裏付けられており、統計面(疫学的アプローチ)からも、それを裏付けるデータがある、とするのがパブリケーション99の結論です。
これを受けて、ICRPは、「全体としての事実は普遍的なしきいの存在を支持しない」と明確に述べています(日本アイソトープ協会翻訳版:総括(h))。
この「しきいの存在を支持しない」とは、比例関係が低線量のどこかで中断し、それ以下では、損害が生じないという限度があることを支持しないという意味であることは明らかです。
つまり、ICRPも、現在の科学的知見では、年間100mSv以下でも健康被害があると考えていることははっきりしています。
なお、ICRPは、低線量域においては、2~3Gy(Sv)レベルの線量域の危険性を2分の1として比例的に考えられるという結果を動物実験から導いています(日本アイソトープ協会翻訳版:総括(f))。この数値は、アメリカ科学アカデミーの文献「BEIR-VII」では、3分の2としており、ICRPはそれに比べれば危険性を低めに見積もっていることが、ICRPの2007年勧告日本アイソトープ協会翻訳版(72)に記載されています。そして、危険性を低めに見積もった場合に、年間100mSvの被曝で癌死が0.55%増加するというのが、ICRPの現在の見解です。
そこで、以上のようなICRPの見解を踏まえて、貴殿が年間100mSvの被曝について、現時点でどのような見解をお持ちであるかを明らかにしていただくようお願いします。ICRPの結論と異なる場合は、根拠となる文献などを明らかにされたい。
ことは、健康・命にかかわる問題ですので、4月24日までにご回答されるようお願いいたします。
なお、本書面は、News for the People in Japan(http://www.news-pj.net/)及び当職が運営しているブログ「情報流通促進計画」(http://yamebun.weblogs.jp/my-blog/)にて、公開させていただくととともに、ご回答の状況についても掲載させていただきます。
不一
◆◆◆以下、基本的に毎日掲載しているものです◆◆◆
●新刊2冊のご紹介●
1冊目:本来正確な情報が提供され、それがなされない場合には追及の場となるはずの記者会見で何が起きたのか?
●アマゾンはこちら→ http://ow.ly/8fo8o
2冊目:原発事故でも明らかなように日本では、国民に主権があるとはいえないのが実態だ。海外ではどのような工夫がされているのか?問題点の洗い出しと改善の糸口を紹介しました。ぜひ、一家に一冊!
アマゾンはこちら→ ow.ly/a2Lxz
●補訂したもの●
日本のマスコミがいかに非民主的な環境に置かれているかを指摘ししました。海外ではマスコミを政府に対する市民の番犬として機能させるための仕組みがあります。それらも紹介しています。民主党が政権奪取後の動き、原発報道について補充しました。
●既刊本●
天下りの防止し、行政の隠れ蓑とされる審議会を改革するために、イギリスではこんな方法が採用されていた!
■■■以下の3点は、日本、特に東北・関東の保護者必読です。ぜひ、輪読会をしてみてください■■■
「ICRP Publ. 111 日本語版・JRIA暫定翻訳版」(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,1,html)
「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)=109」
(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html)
アメリカ科学アカデミーの文献「BEIR-VII」(Biological Effects of Ionizing Radiation-VII、電離放射線の生物学的影響に関する第7報告)
http://archives.shiminkagaku.org/archives/radi-beir%20public%20new.pdf
◆東電本社の記者会見は、午前11時~正午から、午後6時ごろからの2回となっている。インターネットで生中継と録画配信されている◆
→ ニコ生 http://live.nicovideo.jp/
岩上さんのサイト http://ow.ly/4wCEr
◆東電会見に出席し続けている木野龍逸さんへの支援金の振込先口座は下記のとおりです。
郵便局の振替口座
口座番号は、00100-5-362362
口座名称は、木野龍逸支援の会(キノリュウイチシエンノカイ)
なお、銀行からの場合、
ゆうちょ銀行
〇一九店
当座預金
0362362
にお願いします(できれば郵便局の振替でお願いします)。
【日弁連の東日本大震災・原発事故災害復興支援活動】
→ http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/higashinihon_daishinsai.html
●沖縄への連帯ツイッターキャンぺーン●
【ツイッターアカウント】@BarackObama
【メール】→http://www.whitehouse.gov/contactから
【ツイッター例文】
JAPAN IS NOT US'S COLONY! We won't support US BASE. All US BASE OUT! from our country.
Please HELP Okinawa. 75% of the American bases in JP is in the islands, only 0.6% of JP land. Relocate #Futenma base outside.
Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.
Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko
At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて:Gilbert's Nuremberg Diary)
★News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。なお、多忙につき、試行的に、コメントの反映はしないようにします。コメント内容の名誉毀損性、プライバシー侵害性についての確認をすることが難しいためです。情報提供、提案、誤りの指摘などは、コメント欄を通じて、今後ともよろしくお願いします。転載、引用はこれまでどおり大歓迎です。
【ツイッターアカウント】yamebun
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。